伊年印四季草花図屏風 いねいんしきそうかずびょうぶ
市指定有形文化財
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四季折々の草花を中心に桜の樹木やトウモロコシやナスなどの野菜を描いたもので35種の植物が描かれています。野山に自生するものや観賞用の栽培種、水辺の植物などが並列的に配置されています。豊かな草花の風景のようで、実は時間や場所が異なるものが画面上で再構成されています。 江戸時代初期に流行しはじめた本草学(植物学)の影響もあり様々な植物を鑑賞しながら四季のめぐりを感じられる趣向でした。同じころ、私的な室内装飾を必要とする層の拡大により町絵師の台頭と繁栄もありました。それら二つの要因が重なり、好評を得たジャンルとして需要があったようです。それは、四季草花図屏風が他にも多く伝世していることからも推測できます。 この屏風は、俵屋工房を受け継いだ喜多川相説の周辺の絵師あるいは、それ以降に描かれたものと考えられています。 ― 「伊年」印について 屏風の左右に捺された「伊年」という落款は江戸時代前期に活躍した俵屋宗達が主宰する俵屋工房の商標的なものです。この印は、工房に所属する複数の絵師により使用されていたようです。後に俵屋工房は、俵屋宗雪、喜多川相説へ継承されたと考えられています。