Kurobe Art Research vol.2
生誕100年 毛利武士郎と黒部
2023年4月15日(土)- 6月25日(日)
黒部市にゆかりのある作家を紹介するシリーズKurobe Art Researchの第2回目は、生誕100年を迎える毛利武士郎です。毛利は1992年からの晩年の約12年間、黒部市の山側地域にアトリエと自宅を構え、制作活動に没頭しました。彼に黒部移住の契機をもたらしたのは、富山県立近代美術館で開催された『現代日本美術の展望-立体造形』展で毛利を担当した黒部市出身の学芸員の柳原正樹でした。そして、毛利没後には、そのアトリエを「シーラカンス 毛利武士郎記念館」として運営してきました。そこは今でもなお、地域の芸術活動を支える重要な拠点となっています。 本展は、「シーラカンス 毛利武士郎記念館」と共催で、毛利作品の初期から晩年までの創作を俯瞰的に振り返るとともに、富山や黒部との関わりについてご紹介します。
毛利武士郎
Bushiro Mohri(1923-2004年、東京生まれ)
日本を代表する彫刻家の一人です。1943年東京美術学校彫刻科を卒業後、太平洋戦争を経て制作を再開、1954年『第6回読売アンデパンダン』展に《シーラカンス》を出品し、新しい彫刻の方向を示唆する作家として注目を浴びます。初期の重厚感がある塑造作品から、コンピューター制御の大型工作機械でステンレス等の直方体に精微な幾何学模様を彫り込んだ晩年の作品まで作品形態は様々です。1964年頃から新作の発表をやめますが、約20年後の1983年富山県立近代美術館にて《哭Mr.阿の誕生》を発表し、1999年には同館で大規模な個展を開催しました。
本展のポイント
1.
道具と素材と造形の観点から毛利作品を俯瞰的にご紹介いたします。
毛利が用いた道具の一部や晩年に用いた大型工作機が掲載された雑誌等、また実験や計算を繰り返した様子を垣間見ることができる作品の図面や制作ノートの一部も含め展示いたします。細部から見えてくる毛利の人柄や制作への姿勢を感じることができるかもしれません。
2.
毛利武士郎の黒部移住のきっかけを作った黒部市出身の学芸員 柳原正樹との関係について、柳原がかかわった毛利とその周辺についての展覧会関係資料(チラシや新聞記事等)でご紹介します。
また、毛利は自分が亡くなった後には、若い作家にこの場所を活用してほしいと考えていたといいます。毛利没後に、柳原はその意思を受け、アトリエをシーラカンス毛利武士郎記念館として運営しました。毛利が願った通り、現在でも地域の創作活動の起点となっている場所です。ぜひ、現地にも足を運んでいただき、毛利が設計したというそのアトリエの佇まいや、そこでしか見ることのできない作品等をご覧ください。
3.
これまで、毛利武士郎記念館シーラカンスでのみ展示されてきた、未完成作品を出品いたします。黒部移住後の作品は、コンピューター制御の大型工作機によって、金属のキューブ上に穴を穿ち象嵌のようにまた同じあるいは別種の金属をはめる等の働きかけをした作品です。制作ノートや図面にも細かな数字が書き込まれており、機械的、数学的な美しさが印象的です。しかし、この未完成作品について、毛利作品研究者のメイボン尚子によれば、同じ工程で制作されたもののようでありながら、図面やマケット等からも機械的な緻密さというよりもむしろ躍動感ある手作業の痕跡を指摘しており、これまでとは異なるチャレンジが見え隠れしているようです。
常に新たな造形を模索してきた毛利が、次に考えていたことについて、鑑賞者の皆さんと一緒に思いを馳せることができれば幸いです。
休 館 日
月曜日
開館時間
午前9時30分-午後4時30分(入館は午後4時まで)
閲 覧 料
一般500円(400円)、高校・大学生400円(300円)
( )内は20名様以上の団体料金
*中学生以下無料 *障害者等手帳をお持ちの方と付添1名無料
主 催
黒部市美術館[公益財団法人黒部市国際文化センター]
共 催
シーラカンス 毛利武士郎記念館、黒部市、黒部市教育委員会、北日本新聞
助 成
芸術文化振興基金助成事業
後 援
北日本放送、富山テレビ放送、チューリップテレビ、みらーれTV、新川コミュニティ放送
イベント
「オープニングセレモニー」
4月15日(土)14:00~14:30頃
会場|黒部市美術館 *展覧会観覧券が必要です
「クロージングイベント 疑問からひろげてつなぐ毛利武士郎」
6月25日(日)16:30~17:30
会場|黒部市美術館展示室 (25席程度、立見可能)
シーラカンス毛利武士郎記念館 展覧会情報
●2023こぶし記 展 【終了】
4月15日(土)-4月30日(日)10:00~16:00 *月曜休館
毛利を偲んで2006年に開催、2015年からは隔年ごとに行われてきたグループ展。
●武士郎の手仕事 【終了】
5月12日(金)-6月4日(日)11:00~16:00 *月曜休館
株式会社七彩時代に制作に携わった照明器具や記念品の他、《最後の審判》を模した石膏のレリーフ等を展示。
●「かすがい」と「まる」木呼里 安達直樹
6月10日(土)-6月25日(日)10:00~16:00 *会期中無休
自然木を活かした家具の展示。
休 館 日
「2023こぶし記 展」「武士郎の手仕事」は月曜休館、
展覧会開催期間以外は休館
閲 覧 料
無料
連 絡 先
富山県黒部市栗寺41 TEL:090-4323-6885
上記の会期中に、併せてみられる毛利武士郎作品及び資料
《哭Mr.阿の誕生》1983年、石膏、黒鉛
「倉吉DNAの碑 マケット」2000年、黒御影石、ステンレススチール
その他、作業台やその周辺の小作品、小物等